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Noh Sanghee

Noh Sanghee

ノ・サンヒはヨーロッパとアジアを中心に活動するビジュアルアーティスト。韓国で李東勳美術賞 特別賞、日本でトビチ美術館 国際レジデンス競争部⾨ 特別賞を受賞。また、彼の作品は、E22(アヴィニョン)、トビチ美術館(長野)、MOSA(長野)、HAB(ブダペスト)に収蔵されている。現在は世界各都市を拠点に、人間社会と自然環境を構成する根本的な要素に注目しながら創作活動を続けている。

作品名 | Organic Space(2025)

《Organic Space》(2025)は、2023年にパリで発表された室内インスタレーション《Organic Space》を自然環境へと拡張した初の野外作品である。ノ・サンヒは光、メッシュ布、空気、風などの非物質的な要素を造形素材として扱い、投影された光の軌跡を空間に描かれる“ドローイングの行為”として提示している。 本作は単なる映像投影の装置ではなく、光そのものが形を生み出し、消えていく過程を通じて、絵画・彫刻・映像の境界を横断する視覚的構造をつくり出す。 初期の室内バージョンでは、2台のビデオプロジェクターを用いて垂直方向に分割された光の線をメッシュ布上に描き出していたが、種子島での新作では同じ構造的原理を自然の空間に展開している。人工照明の代わりに、空気、風、霧が生み出す抵抗と反射によって形が自律的に変化していく。夜の空気の中で白い光の線はかすかに震え、風の動きに合わせて軌跡を変えながら消えていく。 観客は作品の内部に入ることなく外側からその変化を見つめる。これはまるでスクリーンのない映画を観るように、イメージではなく光の時間性を体験する行為である。光はメッシュ布と空気を通過しながら境界と形を同時に解体し、開かれた自然空間を“生きたキャンバス”へと変化させる。 《Organic Space》(2025)は、プロジェクターの光を物質化し、光・空間・時間の関係を探求する試みである。固定された映像ではなく、絶えず変化し消えていく**「光の彫刻」**として、観客の視線と自然のリズムの中で完成する開かれた構造の作品である。
Technical support:Shin Seung-ju

展示場所 | 宇宙ヶ丘公園

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作品名 | Lusphera(2025)

《Lusphera》(2025)は、光の軌跡と自然空間の呼吸を探求する、ノ・サンヒによる初のレーザー・インスタレーションである。タイトルは「光(Lux)」と「球体(Sphera)」を組み合わせた造語であり、光によって形成される存在の循環構造と振動を象徴している。レーザー光を媒介として、アーティストは風景の表面に線を描き、空気、水、地形を通過する光の運動を自己生成的な幾何学として可視化する。 作品は山の中心から始まる。一本の光が山肌の中心に小さな円を描き出し、それはゆっくりと拡大しながら山の斜面を伝い、やがて湖面へと降りていく。光が水面に反射すると、**山と湖、二つの円が重なり合い、ひとつの「光の呼吸」**が現れる。フォグマシンによって生み出された微細な霧の粒子が光の経路を漂い、現れては消える無形の球体的なボリュームを作り出す。 このゆるやかで反復的な拡張と反射の動きは、自然と人工、物質と非物質、生成と消滅のあいだの境界を問い直す。円のリズムは、時間が空間の中で可視化され、生きているように感じられる瞬間を明らかにする。観客は遠くから、山と湖、霧と光が織りなす対話を目撃し、自然の呼吸が連続する光の循環としてつながる様を体験する。 《Lusphera》はイメージを再現するのではなく、光そのものを顕現させる。レーザーが風景に触れる一瞬一瞬が彫刻的な出来事となり、存在しては消える儚い形を生む。それは、テクノロジーが自然のリズムの中でどのように呼吸しうるかを示す実験であり、光で描かれた瞑想である。
Technical support:Shin Seung-ju

展示場所 | 宇宙ヶ丘公園

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